<P.M. 17:50> (-0h10m) 「・・・おい!起きろ変態!」 怒鳴り声で目を醒まされ、顔をしかめた。ついさっきまで、とても良い夢を見ていたのに。 そう、あの綾崎と2人で・・・ 「・・・ってこら!寝直すんじゃない!起ーきーろー!」 キンキンとうるさい声に、不承不承目を開ける。折角の良い夢の余韻が台無しだ。せめてもう一度綾崎の顔を思い浮かべて・・・そう、こんな可愛い寝顔で・・・ と、思ったところで、目の前の像がやけに鮮明な事に気がついた。 (というか俺、今眼を開けていないか・・・?) 「!?」 飛び起きると、スパーンと小気味良い音が虎鉄の頭で鳴り響く。見ると、何故かスリッパを持ったナギが、これ以上ないほど深く眉間に皺を刻んで立っていた。 「ようやく起きたか、馬鹿者め」 ナギはスリッパをSPに渡すと、忌々しげに虎鉄を見下ろし、クラシカルな懐中時計を示した。 「時間だ。ハヤテは連れて帰るからな」 「あ・・・ああ」 気付けばあたりはすっかり暮れなずみ、落ちたばかりの陽が空に微かな光を残していた。 隣には、まだ眠っているハヤテがいる。幸せな子供そのものの、満ち足りた寝顔で。 ナギは、慎重に運ぶようSPに指示をすると、少しだけ傷付いたような瞳で、背を向けた。 「・・・もう、御免だからな。こんな、意地の悪い魔女みたいな役回りは」 その言葉に、虎鉄は申し訳ない気持ちになるが、ここで謝ったりすれば余計に怒りを買うのは眼に見えていたから、そのまま黙っていた。 と、くんと袖を引っ張られて眼を遣ると、SPに抱えられたハヤテの手が、虎鉄の執事服の袖を握っている。 虎鉄は上着を脱ぐと、ハヤテの体にかけてやった。 「・・・じゃな、綾崎。おやすみ」 軽く頭を撫でて、見送った。最後にナギが何か云いたげに振り返るのにも『早く行け』と手を振って。 「そういや、コインロッカーに預けっぱなしだったな」 <P.M. 18:00> (-0h00m) |